お世話になっております。AWA CONSULTINGの笹倉です。
Forbes JAPANに標題の記事が出ておりました。
これはAWA CONSULTINGのテーマと強い関係性があるので、ご紹介させて頂こうと思います。
労働の変遷から書こうと思ったのですが、そうなるとかなり長尺になってしまうので、
「労働=人類の活動基盤を支え、種の繁栄に寄与するもの」という大枠の定義だけ共有するにとどめましょう。経営者や管理監督者のフェーズまでは下りずに、この大上段で話を展開します。
なぜ幸福は生産性を高めるか
まず、丸々引用します。
『この研究では、幸福が生産性を向上させる理由として考えられる可能性を理論化した。重要な点は、幸福な労働者がより長時間働いたため生産性が上がったわけではないことだ。むしろ、単に幸せであるがゆえに、より良いパフォーマンスを発揮するようになったのである。
考えられる理由の1つは、幸せな労働者は時間の使い方が上手で、スケジュールやToDoリストを常に把握し、きちんとこなせるということだ。2つ目の理由は、機嫌がよいと仕事がはかどるからである。3つ目の理由は、機嫌がよい時の方が効率よく営業電話を売り上げにつなげられるからだ。
3つ目は営業職に特有の理由ではあるが、職種を問わず全体として、機嫌がよければ協調性が向上する可能性は高い。ネガティブな感情が協調性を低下させることがわかっているのだから、その逆もまた然りであって当然なのだ。幸せな人ほどよく笑うため、友好的でオープンな性格だと思われやすいというのもあるかもしれない。』
さて、ここで重要なことは、『幸福』が人それぞれの感性に依存することです。今回の実験は、(恐らく)自己申告による10段階評価を採用しています。これでは、仕事がうまくいったから幸福である、という逆説の入る余地を残します。
よって、いずれもっと踏み込んで欲しいのは、企業別の幸福度平均と労働生産性の相関です。この方が優位性を客観的に証明できると思います。
そしてフォーブスのまとめてくれた中で最も重要度が高いと考えられる要因は、「協調性」が向上することと考えます。さらに踏み込むと、「失敗を許容できる組織」であること。失敗すらも協調的に解決する為には、当人らがその失敗によって受けるストレスよりも、幸福であることが求められます。
付け加えて、フォーブスが記載していない中で重要と考えるのは、社内の「圧力」が減ることです。幸福な人は他人へかける「圧力」が減り、同時に他人から感じる圧力も低下します。「圧力」とは期待感と義務感のことであり、幸福であるとき、幸福であるが故、我々は他者への不当な圧力を気にかけなくなります。自分の幸福に手一杯で、そんな幸福な自分をもっと見ておきたくなるものです。
各人が本来の自分の使命に集中できることは、かなり労働生産性に好影響を与えるはずです。
日本では低い『労働生産性』
そもそも労働生産性ってなんだろう? と調べるときに注意したいのは、その分野には様々な派閥が存在することです。職場でその指標の名を口にすると、十人十色の返答が聞ける可能性があります。
まあ、こんなの統計的な分析をしない以上、数字の詳細な部分はどうでも良いのです。要は、組織の付加価値総額を必要人員で割ったもの。一人当たりが平均的に生み出す付加価値のことです。
日本は歴史的に、呪われているかのようにこの労働生産性が低い、という特徴があります。ちょっと出典を失念してしまったのですが、この状況を説明する考察として「日本人は、労働している姿を美徳的に捉える癖がある」というものがありました。労働している姿が尊い、という価値観であれば、長時間働いている方がより良い、という結論に至ります。これは「苦労している方が美しい」という価値観と、一卵性双生児です。
この考え自体を否定するつもりはないです。昭和生まれですし、ちばあきら氏の漫画も大好きですし、何よりも、成果だけを考える場合は『同一人が同一の仕事を、持続的に行うこと』は、なかなかの良案につけるのです。職人と親方みたいな世界観に近いですかね。
以前、『組織ってなんだ』のブログ にも書きましたが、上記のようなある種根性論的な考え方は、一見ハートフルな印象を見る者に想起させますが、よくよく考えてみると、機械装置とその操縦者による、無機質なものとも捉えられないでしょうか? 『仕事は見て覚えろ』という方もまだいらっしゃるでしょうが、多くの日本人にとって、この考え方を子供の教育に流用することは良くないことだ、と感じるようになっていると思います。お箸の使い方がわからない子供に「俺の使い方を見ろ」しか言わないお父さんは、軽蔑される時代になったと思います。
この例で言っても、子供は幸福度が高い方が、箸の使い方の上達は早いでしょう。幸福度が高い、というのは、子供が自分の力を信じ、達成に向かって努力をしていることに他なりません。間違っても、お菓子をあげて「機嫌が良くなった」から、お箸が上手に扱えると誤解してはいけません。それは機械装置に良いオイルを指すのと何ら変わりがありません。
労働者であっても、子供であっても、表層的な機嫌をとるような付き合い方は、結果的に生産性を下げます。何故なら、お菓子で上げた機嫌は、お菓子がなくなれば低下するからです。ボーナスで上げた機嫌も同じです。
幸福の仕組み
今回のフォーブスの記事ではやや異なった結論となっていますが、AWA CONSULTINGとしては、組織の中で幸福を増加させる仕組みこそが、もっとも組織の生産性や成果を向上させると考えています。
組織にとって好ましい成果を求めるのであれば、それは当然、組織から構成員へ幸福を与えたり、増やしたりすることを検討すべきと思います。その仕組みこそ、機械装置的な無機質なもので良いのです。勝手に人を幸福にする仕組みは、機械のように誰にとっても公平な働きをするべきです。
具体的な方法論になると、また長文になってしまうので、今日はこの辺りで。
さてさて、今日も世の中をよくしてまいりましょう。
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