経営を楽しまれる見込みの皆様、こんにちは。AWA CONSULTINGの笹倉です。
クライアント様とお話をしていると、経営をつまらなくする要因の上位に、会計の仕組みがよくわからない、という項目が上がります。中小企業にとっての会計は守備的な要素が強く、税金によるキャッシュアウトへの観点で語られがちです。
中でも、『棚卸』という言葉が持つ邪悪さに経理の皆様はもちろんのこと、経営者ご本人も相当参っているご様子。
税理士事務所で決算業務を行ってきた私の、一番最初のトラウマもまさに棚卸でした。上司をつかまえて、丸2日聞き続けましたが、全く理解できませんでした。その経験もあって、今ではシンプルな説明ができるようになりました。
棚卸は、仕入高のマイナスなのです。厳密にいうと、棚卸の処理=仕入計上額を減らす処理です。
①事業をしていると、売上に直接繋がるものを手に入れるため、お金を支払います(仕入高)
②多くの場合、これらの支払いの都度、もしくは請求書が来る度、仕入高という勘定科目で計上し続けていきます。期中はこれで問題ありません。売上からこの仕入を引いて、粗利益を計算します。
③期末時になって、売上に繋がっていない仕入が残っていることがあります。塗装屋さんのペンキなどは、使い切っている方が稀ですよね? そうした仕入れたものだけど、売れていない、使っていないものを数えて、仕入からマイナスする作業を棚卸と呼びます。これをしないと、『今年は利益が出そうだから、来年に売るための仕入をいっぱいして、粗利益を小さくしよう』というダイナミックな手法が可能になって、利益調整ができることになってしまいます。なので、棚卸処理自体は必ずしなければいけない項目の一つとなっています。
④いざ棚卸処理! と、ここで奴らの邪悪さが解放されるのです。
それは、勘定科目の中に、『棚卸』とつく勘定科目が山ほどあること。
全部を説明するとA4用紙3枚くらいになりそうなので、端的に。
期末+棚卸=仕入をマイナスする勘定科目
期首+棚卸=仕入をプラスする勘定科目
『棚卸資産』:期末棚卸の相棒
複式簿記では、仕入をマイナスする処理に対し、対となる処理が必須です。
この場合、『仕入のマイナスをしても、ものは実際にある』という現実のものの部分に着目し、『棚卸資産が増加した』という処理をします。
だから、期末時に切る仕訳の例は『商品(棚卸資産) / 期末商品棚卸高』となり、金額は実際に残った仕入の額です。
で、ご推察の通り、期首は真逆の『期首商品棚卸高 / 商品』を切ることで、仕入をプラスするのです。
最後に、棚卸は期末処理をした段階で、『仕入をマイナス=利益をプラス』にする要素があります。これが決算に与えるインパクトがあまりに大きい場合、会計事務所や税理士事務所との打ち合わせが重要となります。考え方だけでもマスターしておけば、その話し合いがわかりやすくなると思います。
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